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3月の2本目は、新宿の歌舞伎町で偶然であった薬チュウの少女・モニカ(小西桜子)を追いかけていたヤクザと懇ろな悪徳刑事・大伴(大森南朋)を一撃で殴り倒して助けたことで、中国マフィアとヤクザから狙われることになったプロボクサーの葛城レオ(窪田正孝)を主人公にしたやくざ映画初恋』(2019年公開、三池崇史監督、中村雅脚本)でした。

今更好いた恋したなどというほのぼのした恋愛映画など魅力はないが、私は映画監督の三池崇史がどんな作品を制作したかに興味を持ち、映画館に足を運びました。将来有望なプロボクサーが、父親の借金のためにヤクザの売春宿に薬チュウにされて監禁されたモニカに、甘い恋心をオブラートに包んだバイオレンス映画でした、まあーネ、娯楽映画としては飽きさせない作品の出来栄えでした、やはり映画製作に手慣れた監督だな・・・と思いました。期待をしてなかったのですが、ただーネ、娯楽映画以上の期待感を監督に持ってしまいます。でも、チョットと手抜きで粗雑なプロットだな・・・と感じる点がたくさん在りました。

まずは、プロボクサーという主人公レオが家族を知らない天涯孤独の捨て子ゆえに、女性に優しいという人物の輪郭まではよいが、そんな堅気の男が、やくざに向けて引き金を引いてチヤかでドンパチの打ち合いを直ぐ出来るかよ・・・!!!しかも体に向けて拳銃の弾で射撃できる、???試合で格下のボクサーにノックダウンされて、脳内を画像で透視する「MRI」を見た医師は、脳腫瘍と診断して、余命が短いと診察した。コントのようなどんでん返しの結末は、他の患者の検査画像と取り違えて診断したーというストーリでした。でもーネ、TVドラマに頻繁に使われている余りに手あかに塗れた漫談のような誤解ですーネ。最後のレオのボクサー復活と、モニカとの新しい家族を想像させるハッピーエンドは、どうも納得ができないよーネ。第一リアリティーを求めるならば、薬チュウのモニカはどうやって麻薬の地獄から抜け出したのだよ・・・、アニメの原作のような曖昧さの残る作品でした。率直に言って、三流娯楽映画ですーネ、でも何も思考せずに楽しめました。

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福島原発

2011年3月11日午後2時46分、マグニチュード9.0の地震が発生、それに伴う巨大な津波福島第一原子力発電所を襲う。津波による浸水で所内全ての電源がストップする。そのことでポンプが停止する、原子炉の冷却が停まる…つぎつき起こる地震津波の被害で、メルトダウン(炉心溶融)の危機が迫った。所内の責任者である吉田昌郎所長(渡辺謙)と1・2号機当直長伊崎伊崎利(佐藤浩市)他の現場作業員50人は、被爆の恐れのある原発内に残り、原子炉制御に奔走するという映画でした。

私は地震津波の始めのシーンから、あれれ、何かの映画に似ているな・・・と感じました。そうです、あの「ゴジラ」が海から上陸シーンではないかーと錯覚しました。

日本の観測史上最大となる東北地方太平洋沖地震東日本大震災」が発生してから10年が経過した今、学者の論説やニュース映像よりも何よりも、原子力発電の危険性を訴えるには大きなインパクトがありました。この映画を見た人間ならば、誰でも原子力発電によるエネルギーの調達は余りに危険だ…、クリーンエネルギという美名に載せられてパンドラの箱を開いた人類は、もう一度原子力ではない方法で電気を起こすべきだという意見を共有するだろうーナ・・・。偶然にも新コロナウィルス感染が国内に蔓延したために、各地での慰霊祭は中止になりました。死者15,894人(宮城県9,541人、岩手県4,673人、福島県1,613人、茨城県24人、千葉県21人、東京都7人、栃木県4人、神奈川県4人、青森県3人、山形県2人、群馬県1人、北海道1人)、依然として行方不明者は2,562人。震災関連死を含めると死者は19,418人にのぼる未曾有の死者でした。この映画は慰霊祭映画と言ってもいい位ですーネ。

ドキュメント映像では原子炉内部の被害や福島県内の町を津波の濁流が押し流す風景はよく流されますが、原子炉の災害がメルトダウンまでの危機を迎えた時に、内閣の危機管理室の混乱や当時の総理大臣菅直人(佐野史郎)や東電本店幹部の狼狽ぶりは中々映像化されなかったですが、この危機の状況での混乱が映像化されることで、改めて原子力発電は停止すべきだ・・・と再認識しました。

3月に紹介する作品の一本目は、原子炉崩壊映画『Fukushima 50』(2019年公開、若松節朗監督、門田隆将著「死の淵を見た男」、前川洋一脚本)は、どんな知識人でも権威ある人でもこの危機の原子力事故の刻々変転する状況と終息方法に途方に暮れることを知らしめる教訓の映画でした。ということは、どんな機器マニュアルがあろうとも危機に準備しようとも原子力の事故と危機きは、簡単に回避できないということですーネ。だから、最早原子力発電は止めよう・・・という意見に一致するのだけれども、依然自民党原子力発電を次々と再稼働しています・・・???世論を原子力発電に引き込もうと、電気事業連合会石坂浩二を使って電気のメディアミックスが妥当の手段のようにTV宣伝を頻繁に流していますーネ。

命を懸けたこんな劇画が持てはやされるのも、所得格差のしわ寄せをまともに受けている貧富の差が反映している時代だから…カナ???

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1月に紹介する2本目は、福本伸行のベストセラーコミックを原作にした劇場版シリーズの、第1作『カイジ 人生逆転ゲーム』、第2作の『カイジ2 人生奪回ゲーム』に続く第3弾の『カイジ ファイナルゲーム』(2019年公開、佐藤東弥監督、徳永友一脚本)でした。

「パート1」「パート2」が、TV番組の金曜ロードショーで2回2週に渡って放映したので、私はこれを書く前に一応TVを見て、内容を思い出しました。皆さん未だ1/24に放映しますので、観賞してみてください・・・。では、貧困と借金のどん底にいるカイジ役の藤原竜也が、シリーズを通して大金を手に入れるために命を懸けた賭博ゲームに次々に挑戦する、手に汗握るストーリが旧作でも魅力でした。こんな劇画が持てはやされるのも、所得格差のしわ寄せをまともに受けている貧富の差が反映している時代だから…カナ???今回パート3では、カイジは日当の7割もピンする派遣会社「帝愛グループ」の監督責任者の黒崎(吉田鋼太郎)に、「不満があるならばサッサと辞めろ」と言われ、如何することもできなくて、1缶千円の缶ビールで憂さをはらすカイジでした。シリーズ1-2にも勝負相手の「悪」とゲームの「親」の金満家が居た。シリーズ1では利根川幸雄役の香川照之、シリーズ2では一条聖也役の伊勢谷友介がゲームの相手であった。

貧困にツブツと不満を持ちながら日雇い労働の人夫をしていたカイジに、金満家の老人・東郷(伊武雅刀)が主催する「バベルの塔」という、一獲千金のチャンスを餌にした危険な賭博イベントに参加するように誘う者がいた。皮肉にも映画の舞台背景は、東京オリンピックを終えた日本で、、物価高の停滞と混乱した経済の中で、不景気に喘いでいた金のない弱者が踏み潰される世の中で、彼らはその危険な賭博に群がった…。ア~きっと、東京2020年と「オリンピック・パラリンピク」にお祭り騒ぎのように国家予算を散財し、赤字国債を発行している自民党安倍政権の経済と不景気を近未来のように皮肉った状況設定をしているのだーネ…

カイジは金を持て余した金持ちの酔狂な博打に参加して勝抜いた。このシリーズ3では、「バベルの塔」「最後の審判」「ドリームジャンプ」「ゴールドジャンケン」という4つの新しいゲームは登場する。ところがシリーズ3では、カイジと東郷が博打の相手ではなくて、「帝愛グループ」の黒崎が巨万の富をかけた賭博の悪者の黒幕になっていた…ノダ。それも、天秤の皿の上に金貨を乗せて、黒川と東郷の勝負になってて、カイジは東郷の勝負仲間になっているのだ…。私は観終わった後、なんとなくナントナク、勝負の緊張感がなくて物足りなかったですーネ。

長渕剛は、果たして何のテーマ、どんなの映画を描きたくて『太陽の家』を制作したのかな…と、映画を見乍らチョットした違和感と不思議な疑問を持ちました。

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1月に紹介する邦画は、一匹狼のヤクザを主役とした長渕剛主演のドラマ『とんぼ』(1988年、柳井満プロデューサー、黒土三男脚本)、『英二』(1999年、川上一夫プロデュース、黒土三男監督&脚本)以来久々の、長渕剛主演の映画『太陽の家』(2019年公開、権野元監督、江良至脚本)でした。

今回のドラマは、やくざではなくて大工の棟梁・川崎信吾(長渕剛)が主役で、妻役に飯島直子、娘役に山口まゆが家族として出演しています。どうやら娘も、お兄ちゃん・高史(瑛太)も、里子らしい。

ある日、建築現場の棟梁の前に現れたのが女手一人で幼い小学生の龍生(潤浩)を育てている保険会社の営業役で、シングルマザー・池田芽衣(広末涼子)でした。父親を知らずに育った気弱な龍生に妙な愛情が湧き、父親役として逞しい心を育てようと面倒を見るようになる。

元々ヤクザ役の演技は、結構、演技というよりも彼の「地」の素顔で演技してた気がします。大工の棟梁役もまた地で演戯していた気がします。がどうも、大げさな身振りと押しつけがましい台詞が逆に鼻につきました。長渕剛は、果たして何のテーマ、どんなの映画を描きたくて『太陽の家』を制作したのかな…と、映画を見乍らチョットした違和感と不思議な疑問を持ちました。

九州の大分に«太陽の家»という障害者が働く施設があるらしいですが、まさか長渕が関係しているのかな…???

GYAOの無料動画サイト「Dlife」でつい先日まで『とんぼ』4回を放映していました。私は懐かしく見てました、特に若い時の秋吉久美子が初々しく出演していたので楽しみました。そんな訳で、新しい映画を楽しみにしていたのですが、やや肩透かしにあった作品でした。

家族全員が富豪の家庭に足を踏み入れ、豪邸を家族が乗っ取ることになった、ある意味犯罪映画でもあり、笑いを誘うバラエティーの味もある韓国映画『パラサイト 半地下の家族/ PARASITE』でした。

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道路よりも低い半地下のモグラの様な住宅に住む4人家族の貧しいキム一家は、父親のキム(ソン・ガンホ)も、ソウル大学に何度も落ちた長男のギウ(チェ・ウシク)も、偽造書類偽証書を作成するのが得意な妹のギジョン(パク・ソダム)も、全員失業中で、日々の食べものも口にできないほど生活に困窮していた。たまたまギウの友だちが留学するので、運よくその富裕層のパク氏の子女の家庭教師の代役を依頼された。IT企業のCEOを務めるパク氏の豪邸に、高給で優雅なアルバイトを採用された。

1月に紹介する1本目は、兄に続いて妹のギジョンもその家で、芸術を教える小さい長男の家庭教師に採用され、父親もまた運転手に採用され、母親もお手伝いに採用されて、家族全員がパク氏の家庭に足を踏み入れ、豪邸を家族が乗っ取ることになった、ある意味犯罪映画でもあり、笑いを誘うバラエティーの味もある韓国映画パラサイト 半地下の家族/ PARASITE』(2019年公開、ポン・ジュノ監督)でした。金持ちの豪邸に家族全員が住みこんでいわば寄生するような生活を始めるストーリです。

第72回カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した、貧困と富裕層が二極化した韓国経済を反映した今にも破綻しそうな生活水準を半面嘲笑し、半面韓国の貧困の人間をカリカチャ化した人間ドラマでした。

私は今まで余程世評の高い韓国映画しか観ませんでした。とかく映画は、ハリウッドの人気作品を模倣したような映画が多かったので、映画好きには余り衝撃を与えるような作品は少なかったです。殺人犯の母性愛を描いた『母なる証明』、近近では広州の反政府運動を描いた『タクシー運転手』はよかったです。この作品も私の記憶に残った作品でした。私は、軽々しい韓国のアイドルがスクリーンに登場する恋愛ものは絶対観ません…!!!一般的に言って韓国社会を反映した映画…、韓国社会の矛盾に押しつぶされた貧困層の庶民の軋轢を描いた犯罪映画に、秀作が多いようですーネ。日本経済で言うと、高度経済成長期に落ちこぼれた日本の貧困層が、やくざ映画創価学会に心酔したと同じなのかな…。韓国映画そのものは、哲学的な深みのある作品はないですが、寧ろ韓国の時代劇が面白いですーネ。TVで放映していた『宮廷女官 チャングムの誓い』や『オクニョ 運命の女』や『ホジュン~宮廷医官への道~』などは、私もドラマに心酔して次回作が待ち遠しいくらいでした。

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山田監督の寅さんが22年ぶりの新作が公開されたので早速見に行きました。12月に紹介する作品は、シリーズ通算50作目の『男はつらいよ お帰り 寅さん』(2019年公開、 山田洋次監督)でした。懐かしく見ている私も、観客もいずれも年を取ったが、スクリーンに登場している俳優もまた俳優としての長い年輪を重ね、まるで50年後に再開する昭和生まれの小学校の同窓会のようでした・・・。

1996年8月(68歳)に亡くなった「車寅次郎」役の渥美清さんは、4Kデジタルフィルムで修復されて甦った姿で出演、葛飾柴又の帝釈天門前にある老舗の団子屋「本家とらや老舗」の娘の諏訪さくら役の倍賞千恵子さん、とらやの隣にあるタコ社長(太宰久雄)の印刷工場で働くさくらの夫・博役の前田吟、満男役の吉岡秀隆寺男の源ちゃん(佐藤蛾次郎)、リリー役の浅丘ルリ子ら、おなじみの面々が再結集した映画でした。加えるに、四季折々、全国各地の風景、さまざまな人生を重ねたマドンナたちの競演も『男はつらいよ』の魅力でしたーヨ。

寅次郎の甥・満男の妻の七回忌に、おいちゃんおばちゃんの待っている「とらや」に一同が集まる。御前様の法事の後で昔話に寅さんも映像で登場する。満男は今は、娘・ひより(一般公募で抜擢の新人の桜田ひより)と一緒に生活していた。小説家に転進していた満男の前にある日突然、書店のサイン会に満男の初恋の相手イズミ(後藤久美子)が現れた。

あのアイドルのゴクミが、流暢な英語とフランス語で、国連の高等弁務官のキャリアウーマン役として働く、成熟した華麗な女性になって登場したのには、私は吃驚しました、エ~あの語学の堪能な女優は誰?後藤久美子なの…と驚きました…。彼女は今、フランス人F1レーサーのジャン・アレジと結婚して、スイス・ジュネーヴにある歴史的な城を改築し在住、3人の子供を育て、女優業からは一線を退いているという。映画にも久々の出演のようです。満男と泉の別れの際の空港でのキスは、なんとなく満男の恥じらいと躊躇いがありましたーネ。

それになしても桑田佳祐の寅さんのテーマソングは素晴らしいですーネ。渥美清の口調を真似たバックから流れる音楽は、まるで背後に寅さんが生き返ったように錯覚さえ致しました。寅さんは言うイエスのように死んだ後にスクリーンの中で復活しましたーネ。

チョット余談ですが、一冊の本を紹介しておきます。ナント何と、教会の牧師さんが書いた寅さんの姿と来歴はイエスキリストと似ているというユニークな映画論&宗教論で、『寅さんとイエス』 (筑摩選書 / 米田彰男著)というまじめな寅さん論です。だけど鉄矢が紹介すると、いちいち頷けるイエス=寅さん論です。彼の放送を一度聞いた私は、すっかりファンになりました。私も読みました本ですが、きっかけはあの水戸黄門のTVドラマの主人公にもなった武田鉄矢さんの朝のラジオ放送の«武田鉄矢/朝の三枚おろし»(文化放送、毎朝7:40~)で紹介された一冊でした。あの武田鉄矢の独特の講談調の語り口で、寅さんの魅力を満遍なく語られています。是非、下記YOUTUBEに全部が収録されてるので、映画と共に夜な夜な堪能してください・・・!!!私は一時期は子守歌にこの放送で眠っていました。序に鉄矢の縄文文化論も聞いてください、これも無類の聞く価値があります。(https://www.youtube.com/watch?v=wZwBm7lBZ4U)

チョップリンやキートンの活躍した「活動写真」時代を、今なぜ映画の歴史を振り返ってまで、モノクロ無声映画の時代を喜劇で振り返るのかな・・・と思いました。

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周防正行監督作品で、『シコふんじゃった。』(1991年)や『それでもボクはやってない』(2007年)の2本が好きでしたが、今回公開された『カツベン!』は、わたくしの好きな1本になりました。その先時に、社会性を内包した映画を製作してきました。『それでもボクはやってない』などもその当時痴漢で逮捕されたサラリーマンが、冤罪を晴らそうと裁判で争っった社会問題があった、更に、『終の信託』(2012年)なども安楽死の問題があった・・・。では、近作の「カツベン」はどんな社会性を持っているのかな…?私のわからないことは、チョップリンキートンの活躍した「活動写真」時代を、今なぜ映画の歴史を振り返ってまで、モノクロ無声映画の時代を喜劇で振り返るのかな・・・と思いました。

 

村のカツベンを覗き見てして覚えた人気弁士の山岡秋聲(永瀬正敏)の物まねをしていた染谷俊太郎(成田凌)は、偽の活動弁士として泥棒一味の片棒を担ぐ生活にウンザリして逃げていた。公開初日に映画館へ駆け込んだ3本目は、子供から青年に成長した染谷俊太郎は一味からトラックから落ちた現金カバンを片手に逃亡し、ある町の映画館「青木館」で雑用係として働き始めていた・・・活動写真を舞台とした喜劇『カツベン! 」(2019年、 周防正行監督、片島章三脚本)でした。

 

今までの周防正行監督作品の流れとしてはチョット異色でした。これから彼の作品はどんなテーマを選ぶのかな・・・と期待したいです。チャップリンの『独裁者』のように人を笑わせながら社会と世相を痛烈に批判する作品を作ってほしいですーネ。