岬にそそりたつ「のろろ様」の巨大な像の頭部が転げ海に落下するシーンは、この作品をよりドラマチックにしていました。

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吉田大八監督錦戸亮木村文乃演じる羊の木・・・この映画をもう見た?まだ見ていないの?

今回は、山上たつひこいがらしみきおによる、第18回文化庁メディア芸術祭優秀賞に輝いた問題作のマンガを実写化した『羊の木』(2017年、吉田大八監督、香川まさひと脚本)を見ました。漫画をほとんど読まない私なので初めて知りましたが、元々漫画連載の時から大変に話題になっていたようです。架空の寂れた田舎町の港町・魚深市にいずれも元殺人犯で刑期を務めていた元受刑者が、新仮釈放制度により男女6人が移住してくる。ここが斬新な刑法の発想が置かれています。海外などで、刑務所が満杯なので逃亡しない装置を付けて自宅軟禁したり、死刑制度を廃止して孤島に幽閉したり等々、の新しい刑事制度が現れているので、奇異とは言えないでしょうーネ。マイケルムーアの「世界侵略のススメ」でも、そんな刑事制度をドキュメントしています。

シャッター街の商店と若者が町から逃げていく活気のない漁港を活性化する為に、新住人の世話と受け入れ担当を命じられた市役所職員の月末(錦戸亮)と、彼ら6人が、主人公です。それぞれの過去の犯罪を抱えながら平穏無事の日常と平凡な生活を始めたのだが…、ところが、旧い先祖代々から伝わる「のろろ祭」を境に、この静かな港町に異常な心理が爆発し、突然の殺人が起きる…。

その一人、依然荒くれ者の杉山勝志(北村一輝)は、釣船の業者として船に乗り、太田理江子(優香)は介護施設の老人たちの面倒を見て、月末の父・亮介と知り合い、介護士する内に身体障碍者としての老人と結婚する約束をする。酒乱の夫を殺した栗本清美(市川実日子)は清掃員として几帳面に実直に淡々と掃除をこなし、死んだ生き物を庭に埋める。徒弟時代にいじめられた末にナイフで床屋の同輩の首を切った福元宏喜(水澤紳吾)は、元懲役者だった床屋のオーナー雨森(中村有志)からその腕を認められた。元組ヤクザの大野克美(田中泯)は、抗争相手の組長の首を針金で絞め殺したが、組織から足を洗いクリーニング屋でこまごました雑用をこなしていた。過去に何人も殺人を犯した宮腰一郎(松田龍平)は宅急便の仕事をしていた。彼も月末が組んでいる復活したバンドの練習に参加する。月末の高校時代のバンドメンバーの一人で、都会からユータウンしてきた看護師の石田文(木村文乃)と付き合い始めていた…。
 
原作のマンガは、講談社の雑誌『イブニング』で2011年から2014年まで連載されたようです。いろいろな漫画好きの方の感想を聞くと、原作と映画はだいぶ違うようですーネ。特にこの作品は、漁港に古くから伝わる伏線の伝統的な奇祭「のろろ祭」…、祭りの日に2人の生け贄がそこから飛び込むと、一人は助かり、もう一人は沈んだまま死体が揚がらない…、という話が言い伝えられている。最後のシーンに岬にそそりたつ埴輪のような形の「のろろ様」の巨大な像の頭部が転げ海に落下するシーンは、恰ものろろ様の祟りのようでした。この作品をより一層ドラマチックにしていますーネ。


映画タイトルの「羊の木」は、果て何の意味なのかな?と胡乱に思う人も居るでしょうーネ。私もその一人です。原作を読んだ人によれば、「ウール(羊の毛)」に似ているという感覚からコロンブスの時代には、ヨーロッパの人々は木綿は羊のなる木からとれると思っていたようです。

何処かの地方に先祖代々伝わる、日本の神話と、少子高齢化によって過疎化した漁港と、元殺人犯の移住者たちという、三つの要素が絡まった劇画ならではのユニークで興味津々なストーリを完成させた…と言えます。「邦画にしてはよく練りあがった、現代に現れた新しい神話的フィクションですかね。
これ以前に掲載した昨年の記事下記サイトにアクセスして読んでください。