ユダヤの王エロドにヨカナーンの首を所望するために7つのヴェールの踊りを踊るサロメの妖艶な姿を、累が見事に演じる土屋太鳳の舞踊に、私は魅せられました…。作品的には難解な映画でした。

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佐藤祐市監督土屋太鳳と芳根京子演じる累 -かさね-・・・シネマ・コメンテータの流石埜魚水です。この映画をもう見た?まだ見ていないの?

9月の2本目は、唇を接触した相手と顔が入れ替わってしまう口紅を、伝説の名女優の母・淵透世〈フチスケヨ〉(檀れい)から譲り受けた、頬に切り傷があるためコンプレックスに燻っている娘・淵累(芳根京子)と、人気はあるが今一つ才能を認められない舞台女優の丹沢ニナ(土屋太鳳)が主役にー、情念と美を寄り合わせた演劇映画『累 -かさね- 』(2018年、佐藤祐市監督、黒岩勉脚本)でした。淵透世の法事に出席した丹沢ニナの専属マネージャー・羽生田釿互(浅野忠信)が新進演出家・烏合零太(関ジャニ∞横山裕)が手掛ける舞台オーデションへの主役抜擢を画策する。人と人が入れ替わるという不思議な魔力を持った口紅を使って、丹沢ニナと淵累の二人がキスをして、累が身代わりとなってオーデションを受けて、演出家烏合の関心を射止め主役に抜擢される…というストーリ設定が骨子です。

映画の劇中劇にはオスカー・ワイルドの戯曲「サロメ」の舞台が演じられる。何でも好きなものを褒美に与えると王に約束させるサロメは、ユダヤの王エロドに預言者カナーンの首を所望するために7つのヴェールの舞を踊る妖艶な姿を、累役は見事に演じる。土屋太鳳の舞踊に、私は魅せられました…。最早、美少女のアイドル女優ではないなーと感じました。ハテな、佐藤祐市監督の演技指導がよかったのだろうか…ナ???私は佐藤祐市監督がプロデュースした誉田哲也原作の刑事役姫川玲子演じる竹内結子のTVドラマと映画『ストロベリーナイト』シリーズの大ファンなので鑑賞しましたが、映画としては大変難しい作品でした。私は今まで読んだことも原作も知らない劇画なので、見ている途中でストーリの細部が「オヤーえー、オヤオヤ」というな映像での説明が不十分な部分がありました。サロメの舞台に力が入り過ぎて、寧ろバランスを欠いてしまたの・・・カナ。でも、あのサロメの舞台も捨てがたい魅力がありました。劇中劇ではなくて、サロメの舞台そのもの土屋太鳳主役で上演してもいいのではないのかな…!?

でもねー、口紅によってキスをした二人が容姿ばかりでなく人格まで入れ替わるルージュの起原は?どこでどのようにして手に入れたのか?キスしたことで何故、心身が入れ替わるのか?等々。私は思い浮かびませんが、それが神話的起因ならば、それらしい映像の挿入が欲しかったな…と思いました。そもそも何故、累は子供の頃より頬に疵があるのか???も良く分かりませんでした。回想のようなシーンに子供同士のカッターを持った画像がありましたが、それはそれで余計に矛盾が深まりました。

どちらかと言えば、私の願望としては土屋太鳳と「ルージュ」自体を主役にしたもっと幻想的な殺人事件、だから推理小説か刑事もののストーリにしてほしかったな…!!!近代の女性を変革した道具を挙げるとするならば、私は「口紅」と「ピル」、ナンカ女性だけが使う、セクシャルシンボルのような道具を二つ、三つを絡ませた映画が観たいです。私がそんな脚本を書いたら、誰か映画にしてくれないかな…!!!それと再び直観したのですが、羽生田釿互役の浅野忠信は、恐らくニナと累を言葉巧みに操る腹黒いマネージャーならば、もっと悪人らしい、もっともっと悪のイメージの濃い、凄みのあるアクの強い俳優でよかったのではないのかな。私ならば、竹内力のような人が適役だったな。ただ、この羽生田釿互は累の母とも関係が有り、母を女優として売り出した担当者であった。母も同じ口紅を使った身代わり出演して人気を呼んでいた…やや複雑で怪奇ですーネ。