「核家族化」、「無縁社会」の膨張を続ける現代の家族制度の虚無の難題を解決する家族制度が、昔ながらの大家族なのか?…と思いたくもなる作品ですーネ

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山田洋次監督橋爪功吉行和子、西村まさ彦、夏川結衣が演じホームドラマ妻よ薔薇のように・・・この映画をもう見た?まだ見ていないの?


チョット迂遠になりますけれども、山田洋次 監督の古い作品『故郷』(1972
年)から映画コメントを始めます。瀬戸内海の小島・倉橋島で小さな古い砂利運搬船を川に浮かべ、川底の石を採り、採石を運んで細やかな暮しを立てていた石崎家は、古くなったエンジン故障などの多額に及ぶ船体の修理を諦めて、親戚を頼って鉄工所で働くために故郷を捨て、広島・尾道市の都会生活へ移往する。精一役の井川比佐志、民子役の倍賞千恵子夫婦の揺れ動く心と、その不安な心と動揺に対して重しのように「長男のお前がしっかりしろ―ヨ」と息子をドヤシて励ます一家の家父長的存在の石崎仙造老人役の笠智衆演技は、つくづく味がありましたーネ。日本の家族制度の崩壊をテーマとして映画化した山田洋次 監督ですが、今まで土地に縛られた古い家族制度と血縁に縛られた前近代的な「家」が、「工業化」の波と経済制度の変遷によって故里から移住を余儀なくされた。最早封建的「家」制度も雲散霧消した1960年代の昭和期経済成長の中の地方都市、家が崩壊しても依然、家父長的存在の石崎仙造老人が、危機の中で家族の絆を危うく支える「家長」の意味が濃厚に映っていました。

小津安二郎監督の名作『東京物語』(1953年、笠智衆原節子が主演)をモチーフに山田洋次監督がリメイク制作した『東京家族』(2013年)は、1973年の『故里』の延長でもあります。広島・尾道に暮らす周吉と妻・とみが子供たちが住む東京へ上京するが、ところがち東京の子供たち、長男の医師も長女の美容師も忙しさから歓待を受けなかった。唯一戦死した次男の嫁だけが親切に接してくれただけだった。尾道に帰って間もなく…帰郷して数日もしないうちに、とみが危篤状態であるとの電報が子供たちの元に届き、子供たちが尾道の実家に到着した翌日の未明に、とみは死去した。映画の舞台は広島と東京に住む昭和の「家族」と家族の絆の消滅をリアルに描いてました。

さてさて、ホームドラマ家族はつらいよ」シリーズでは、三世代が一緒に暮らす平田家がシリーズのベースになっています。一家の家長で既に隠居している平田周造役の橋爪功、その妻で小説を書く市民講座にも参加する活発な女性・富子役の吉行和子、長男・幸之助(西村まさ彦)と嫁の史枝(夏川結衣)、彼らの子供である男の子二人総勢6人が同居する大家族の周辺にさまざまな騒動が惹起する、山田監督独特のペーソスを含んだホームドラマ家族はつらいよ」シリーズの第三弾です。第一作の『家族はつらいよ』(2016年公開)、第二作の『家族はつらいよ2』(2017年公開)に続く今作も山田洋次監督の原作&脚本で、いつもの出演メンバーも金太郎飴のように橋爪功 吉行和子 西村まさ彦 夏川結衣蒼井優妻夫木聡が顔をそろえてます。昨今希になった祖父夫婦、長男夫婦と孫たち3世代が同居する大家族をコメディー風に問うホームドラマ妻よ薔薇のように 家族はつらいよ III』(2018年、山田洋次 監督)もまた、山田洋次ならでは作品でした。寧ろ、「核家族化」、「無縁社会」ゆえに膨張してゆく近現代の家族の難題を、地縁血縁の中で解決する昔ながらの大家族を理想としているのかな…と思いたくもなります。

ストーリは、主婦の史枝は夫に内緒で貯めていた40万円余りのへそくりが空き巣泥棒に盗まれ、怪我も何事もなく、お金が盗まれただけで済んだ盗難事件に安堵していたが、夫の幸之助は妻の「へそくり」に怒る…。史枝はそれを理不尽に感じ実家に帰ってしまう。彼女がいなくなり、その上、富子も腰痛がぶり返しベットで安静状態。仕方なく周造が掃除洗濯子供の弁当や朝食の支度まで四苦八苦でやることになる…。今作の近代的家族の視点は、改めて妻の役割と家族の問題、家事に追われる妻の家事労働の価値、自分の夢を捨てて小さな家庭内の雑用に追われる「妻」の生き甲斐と存在価値を問題にしたテーマと言って良いだろうか。

私は昨今、子供の虐待が問題になって、幼い子供たちが犠牲になっている子供の虐待死の事件を見ると、地域社会から孤絶した核家族化した小さな家庭独特の新しい問題が今、現代家族の危機を迎えている気がします…がね!!!山田監督よ、もしもシリーズ第4弾があるとするならば「子供の虐待」を通して、夫婦にとっての子供の愛情とは何か?…をテーマを選んでください。丁度今作終盤で、ピアノ調律士の平田家三男の庄田の妻で、看護婦の憲子が妊娠をして、二人に赤ん坊が誕生しそうではないですーか。
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