バラ色で幸福な平成の家庭に、夫がノボセるように演出している姿は、ある意味で私には現代日本の怖い家庭の不協和音のように見えました。

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中島哲也監督妻夫木聡黒木華演じる来る・・・シネマ・コメンテータの流石埜魚水です。この映画をもう見た?まだ見ていないの?

12月の1本目に紹介する映画は中島哲也監督のホラー作品の「来る」です。サラリーマンの田原秀樹(妻夫木聡)と妻の香奈(黒木華)は、熱々の新婚生活を送っていました。結婚式場の親戚友だちの歓声と賑やかで晴れやかなシーンは、2人の親密で幸福な新婚生活を約束するようでした。が、・・・秀樹の田舎の婆さんの葬式のシーンはその真逆なオドロオドロシイ恐怖の予兆の様なシーンで、対比的でした‐ネ。ホラーの始まりの導入部なのかな・・・。赤ん坊の出産後に、嬰児・知紗の成長を喜び、成長記録をブログに細かく掲載して、会社の同僚にも幸福な家庭を自慢にしていた。秀樹のいかにも円満で子煩悩な家庭的姿は、日本の何処にでもある標準的な風景です。いかにもバラ色で幸福な平成の家庭に、夫がノボセるように演出している姿は、ある意味で私には怖い現代日本の家庭の不協和音のように見えました。この辺りは監督の映画作りの巧みさを感じました。

知紗が誕生する前に、奇妙な事件があった。ある日、田原秀樹の勤務先に彼を訪ねて来客があると聞かされ、取り次いだ後輩は「チサさんの件で」と話していた。が、その赤ん坊の名前はまだ妻・香奈のお腹に妊娠中でした…。その後輩社員も肩から噛まれたような不思議な傷跡が原因で亡くなる、奇妙な死から始まる『来る 』(2018年、中島哲也監督)でした。中島監督がどうしてホラー映画などを制作したのか、私にはよく分からないですーが、もっと斬新なホラーが作れたのではないのかな…。

第22回日本ホラー小説大賞に輝いた澤村伊智の小説「ぼぎわんが、来る」を中島哲也監督が映画化した作品。多分監督にとっての初ホラー映画ではないでしょうか…、でも映画作りの巧みさを感じさせる作品でした。何時ものホラー映画、ただ恐怖心を煽る凄惨な人間の殺戮も、だらだら血を流す怖い映像を垂れ流し、耳を劈く摘ん絶叫する声を四方八方から突然反響させる、わざとらしい従来のホラーではなかったです。でもーネ、だからかな、よけいに私は駄作なのが残念に思いました。原作を読んではいないのに僭越ですが原作が悪いのかな?・・・とも思いました。

ホラー映画を総括する実力はないですが、海外のホラーはキリスト教徒にまつわる宗教的な作品や北欧の異教徒の民間伝承が多いのに対して、邦画の場合は村の謎めいた民俗学的な伝説・伝承のホラーが多いデス。動物の絡んだホラー、落ち武者の伝承が関わるホラー、戦争の兵士の亡霊だとか様々です。それにしても。山に潜む怪物「ぼぎわん」が人を攫いに来る、魔物が人間を隠す…民間伝承のホラーならばもっともっと村の伝承を詳しく描いてもいいなーと感じました。

岡田准一がフリーのオカルトライターとして出演しているが、余り目立たなかったです。初め誰が岡田准一なのか気付かなかったです。それがいい演技なのか、大根役者なのかーナ、判断に迷いますが…。むしろ、ホラー映画に主演俳優はいらない…のだと思いました。