町田くんの存在は、人間の片隅に善を培養する「希望」を残すー「善なるもの」の心の可能性残すメルヘンだろうかーナ。


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運動が不得意で、学校の勉強が苦手で、教室の人気者でも皆のヒーローでない、いつも目も目立たない鈍重なメガネ高校生の少年が主人公です。しかし、困っている人を見るとそのまま見過せない優しい性格の町田くん(細田佳央太)を主人公とするメチャ青春ドラマ『町田くんの世界』(2018年公開、石井裕也監督&脚本、片岡翔脚本、原作:安藤ゆき町田くんの世界」(集英社マーガレットコミックス刊))が3本目に紹介する映画です。でもそんな町田くんは、接する人たちの世界を変える不思議な「人助けの善人」の力を持っていました。

町田くんの「善性」に電撃を受け、町田くんの優しさのの虜になった一人が、登校しても保健室でサボり、めったに学校に顔を出さない、不倫美人アナウンサーを母に持つ同級生の猪原奈々(関水渚)と、周辺の同級生たち・・・、例えば下級生の高嶋さくら(高畑充希)と、彼女がノボせてベタ惚れの高校生モデルのモテモテ男子・氷室雄(岩田剛典)がいました。彼とバスに同乗するタレントのゴシップカメラマンも、彼からて檀劇を受けた人間の一人にいました。

満員のバス車内で妊婦の女性や年老いた老婆に席を譲ることは、町田くんの善行の一つでした。困った人を見ると、小走りに近寄り手を貸すのが町田くんの善行の一つでした…。それが当たり前のようにできるのが町田くんのマジカルな性格でした。図書館で分厚い本を何冊を抱えている図書係りの女高生、壁の上に神社の七夕ポスターを張るのに背伸びして難儀している広報係りの男子学生・・・、誰もかれも彼の「善性」に衝撃を受けました。

人の肉体の欠点や顔を臭さして「ブス」と罵声を浴びせ、気弱な性格をいじくって茶化して囃子すのが学校の苛めですーヨネ。それに悲観して死んだ幼気な中学生や女子高校生が、これまで何人いたか、どれ程いたか分からないほどニュースになりました。学校での苛めは悲惨な社会現象であり、それが中々沈静化し途絶えませんーネ。これだけ騒がれても、今でも日本のどこかで起きていますーネ。この町田くんは、そんな社会の風潮に「待ったダウト…!!!」を叫び、人間の「悪」に、ソレデモね、人間には片隅に善を培養する「希望」を残すー「善なるもの」の心の可能性残すメルヘンだろうかーナ。でも、こんな少年はこの世界には存在しないお伽噺のメルヘンなのだろうーネ。でも、どんなにこの世に邪悪な心を持った悪意の瀰漫する世界だろうが、人間の片隅に「善なる」心が残っていると、希望を持ちたいですーネ。ア~、これは、親鸞悪人正機の言葉、「善人なおもって往生を遂ぐ、いわんや悪人をや」のことかな。

ニーチェならばこの映画を見て、どんな感想を持つかナ…とチョット興味津々です。あるインタビューで映画についてのコメントをこう述べています。https://eiga.com/news/20190606/18/

・・・映画は愛とか友情とか夢とか生きる喜びとか、そういう手垢が付きまくったことは、本来描くべきではないのかもしれない。もっと言うと、愛とか夢とか、得てして歯が浮くような言葉や事柄以外に、描くべきことなんてない。・・・今作は、町田くんという博愛で人類皆を愛していた聖なる少年が、1人の女性に恋い焦がれていくことで、聖なるものを捨て去り普通の人間になる物語なんです。そんな彼に、圧倒的な奇跡をプレゼントしたくなった。人を好きになることの向こう側へ、ぶっ飛ばしてあげたかった・・・と。

私は石井監督の制作意図に反して、あの最後の風船に乗って空中を飛び交って、猪原奈々に愛の告白をする空中散歩はどうも冗長でやや退屈に数十秒と感じました。ただ、「聖なる少年」という言葉には、エ~と驚きました。秋山さと子の『聖なる男女』(2012年刊行、青土社)と言う本は読んだことがありましたが、聖なる少年か…。ひょっとしたら猪原奈々も「聖なる少女」なのかな。