私にはこの作品が何時日本が戦争状態になってもおかしくない政治的可能性を描いた作品というよりも、日本の「自衛隊」と軍隊の必要性を手放しに賛美した映画に見えました。

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5月の邦画の4本目は、今の日本の武力衝突の可能性をシリアルに描き、自衛隊の「軍事衝突」を生々しく取り上げた戦争映画『空母いぶき』(2019年公開、若松節朗監督、かわぐちかいじ原作小学館ビッグコミックス〉掲載、伊藤和典長谷川康夫脚本)でした。

過去の戦争ではなくて、日本の今の政治を想定したストーリ…、20XX年に日本が領有権を持つ領土の一部、日本最南端沖の波留間群島で架空の民族国家「東亜連邦」という国籍不明の軍事勢力が漁船20隻で占拠し、接近する自衛隊に攻撃を開始した。更に、自衛隊員が島に拘束され、戦闘に発展する事態が発生した。閣僚各位を招集し緊急会議を開いた日本政府は、議論の末に総理大臣垂水慶一郎(佐藤浩市)は日本の「専守防衛」の立場の板挟みにあいながら「防衛出動」を発令する。艦長・秋津竜太(西島秀俊)と副長・新波歳也(佐々木蔵之介)の乗り込む航空機搭載護衛艦いぶきを派遣、一触即発の戦争勃発の危機を収束しようとする。が、「東亜連邦」が攻撃をする中で、敵との戦闘機での空中戦や「いぶき」に向けて発射される攻撃ミサイルなどで、数名の死者を出す自衛隊多国籍軍との戦争さながらの戦闘風景が描かれています。

日本列島周辺近海で朝鮮半島尖閣諸島付近で中国との軍事的衝突が起こる危機を頻繁に迎えている現状がある日本です。この映画での「波留間群島」は「竹島」と容易に連想出来るし、中国の漁船が領海侵犯する日本と中国間の小競り合いはよくニュース映像に取り上げられます。だから、もしも局地的な戦闘が「戦争」にエスカレートする危険な可能性を孕んだ戦争映画ですーネ。

戦争の悲惨さを知らない国会議員と、東南アジアとの経済紛争さえ処理できない脆弱な「外交力」と、未だに太平洋戦争の敗戦とGHQ占領政策を屈辱と考え「復讐主義」に執着している自民党の後継者たちの妄念は、憲法9条改憲しようとしています…。が、果たして「被爆国日本」の平和はこれでいいのかなーと、考えさせられる作品でした。

ラストシーンで、安保理事常任国の潜水艦が武力衝突が戦争に発展するあわやと言うと時に、国連の紀章を掲げて浮上し、戦争と紛争を回避する国連の意思を「東亜連邦」に表すことで、「波留間群島」から軍隊が撤退して、終わる。でもさ、アメリカやロシアや中国などの安保理事常任国にそんな戦争を仲裁する力があるのかな…。少なくても過去の戦争にはなかったと思います。寧ろ、ベトナム戦争にしても中東戦争にしても、ただ、アメリカを傍観するだけでした。私には、チョットその辺りが余りにハッピーエンドにまとめるお伽噺のように映りました。それに、日米安保条約はどうしたのかな…???まずは核の傘に入る日米の防衛態勢から言えば、日本に駐留している米軍が出動する筈ですーヨネ。

確かに、戦争映画と言うのはスリリングで見ていてワクワクするんだけれども、日本近海が舞台だけによりシリアルになります。でもネ、私にはこの作品は日本が戦闘状態になる政治的可能性を描いた作品とはいえ、日本の「自衛隊」と軍隊の必要性を賛美した内容に見えました。是非皆さんの感想をお聞きしたいです。