私の見た限りでは煙害に対して企業が農民のために巨額なお金を投じた美談のようにも思え、物足りない作品でした。

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6月に紹介する4本目の邦画は、日立鉱山が吐き出す亜硫酸ガスによる煙害によって、山林が枯れ、田畑の農作物も枯れる甚大な被害を受けた近隣農民の反対運動に対して、入四間村の郷氏・関根三郎たちと、日立鉱山職員・加屋淳平たちの奔走によって、解決策として建築された巨大な煙突をテーマにした『ある町の高い煙突』(2019年公開、松村克弥監督&脚本、新田次郎原作、松村克弥脚本)でした。

明治9年古河市兵衛に買収されてから10年足らずで生産量日本一の大銅山にのし上った渡良瀬川上流にある足尾銅山へのもたらされた沿岸農村の鉱毒への反対運動は、栃木県選出代議士の田中正造を主人公とする映画はあったが、日立鉱山の煙害を舞台とする映画は初めてのようです。足尾銅山の映画『襤褸の旗』はよく知られてます。日立銅鉱山と煙害と日立の大煙突建設のエピソードは始めて知りました。

しかしどちらも、時代背景は日露戦争の始まる日本の近代化と富国強兵と帝国主義の時、銅資源の需要が急速に求められた共通点かあり、資本家たちにとっては金になる鉱山産業でした。でもーネ、今でも日立市は日立の企業城下町ですが、私の見た限りでは、公害と環境破壊の反対運動の作品というよりも、煙害に対して生死をかけた生活破壊の煙の被害と反旗にに対して、企業が農民のために巨額なお金を投じた美談のようにも思えました。大変地味な映画で唯一の盛り上がりを見せたのが、加屋淳平の妹で結核で亡くなった千穂と関根三郎との間の淡い恋物語だけでしょうか。私も途中で倒壊し、山腹に残っているこの産業遺産を一度見たいと思いました。